ホーム > お知らせ

同門会関連医療機関

3月4日土曜日 世界腎臓デーに大分市他と共同で、イベントを開催します。ホルトホールおおいたとWEBの両方で、参加可能です!

↑画像をクリックするとPDFでご覧いただけます。

 

 

 

 

 

大分大学医学部 内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座
教授 柴田洋孝氏に聞く
「世界腎臓デー」特集

 

 毎年3月の第2木曜日は『世界腎臓デー(World Kidney Day)』。大分市ではJ:COMホルトホール大分にて、3月4日に関連イベントが開催される予定だ。そのイベントで司会を務める大分大学医学部 内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座の柴田洋孝教授に、世界腎臓デーや腎臓病についてお話を伺った。

 

 

『世界腎臓デー(World Kidney Day)』が制定された経緯や今回のイベントについて、教えていただけますか

『世界腎臓デー(World Kidney Day)』が制定されたのは、2006年のことです。医療関係者から国民に向けて、病気の早期発見と治療の重要性などを啓発するこのような取り組みは、ほかにも糖尿病や乳がんなどにおいても実施されていますが、腎臓デーは毎年3月の第2木曜日と定められました。

 

大分ではより多くのみなさまに気軽にご来場いただきたいとの思いから、3月4日土曜日に、世界腎臓デーイベント2023 in大分「来て見てガッテン 腎臓のこと」と題してイベントを実施します。

 

内容は腎臓内科の福長先生による「CKD慢性腎臓病〜学んで守ろう あなたの腎臓」、大分内分泌糖尿病内科クリニックの但馬院長による「ご存知ですか?透析の原因1位は糖尿病〜血糖とそれ以外も大事!腎臓を守るコツ」、管理栄養士の廣田先生による「食事でいたわる大事な腎臓」の3つの講演と市民のみなさまとのディスカッションで構成されます。

2019年以降、コロナの影響で開催できませんでしたが、今年は会場とオンラインのハイブリッド開催を実現することとなりました。

 

国民の8人にひとりが罹患(病気にかかること)し、新たな国民病ともいわれているCKD(慢性腎臓病)は、どんな病気なのか教えてください

CKDとは、腎臓の機能がゆっくりと低下していくすべての腎臓病のことです。CKDかどうかは、尿検査と血液検査によって調べます。

腎障害を示す検査所見(検尿異常など)とGFR(糸球体濾過量)が60ml/分/1.73m2未満になる、といった検査結果のいずれか、または両方が3ヶ月以上続いた場合、CKDと診断されます。漠然とした「CKD」という病名が提唱された背景には、末期腎不全や透析導入の予備軍、および心血管病のリスクがある病態として認知度を高め、早期に予防や進展抑制をはかる目的がありました。初期は無症状なので、自分で気づくことはまずありません。

 

そのまま放っておくと、個人差はありますがゆっくりと、もしくは急激に腎臓の機能が低下し、最終的に腎不全となってしまうと、人工透析が必要になります。そうなると、透析が必要ない状態には戻れません。逆に言えば、早い段階でCKDを見つけていれば腎臓の機能低下のスピードを遅らせて、透析を予防することができます。

 

CKDにならないためには、どんなことに気をつければよいのでしょうか

CKDと生活習慣病は、密接な関係にあります。腎臓に負担をかけ、機能低下を加速させる大きな原因は、一番は糖尿病、次に高血圧です。血糖と血圧、脂質の数値を毎年検診で把握し、コントロールすることは、CKDとその原因となる糖尿病・高血圧・メタボリックシンドローム(メタボ)の予防にもつながります。

 

数値のコントロールには、適度な運動やバランスのいい食事などを意識することが大切です。
特に肥満は生活習慣病の始まりといえますので、気をつけていただきたいですね。
始めは検査で悪い数値が出なかったとしても、肥満の状態が5年続けば血圧が高めに、10年たてば糖尿病にと負の連鎖につながります。
メタボは男性の方が多いイメージですが、女性も閉経を迎えると、急激に血圧が上がったり体重が増加したりしやすくなるので、注意が必要です。

 

最近、糖質制限のダイエットが話題になりましたが、かわりに脂肪酸やたんぱく質の摂取が多めになることから動脈硬化や腎臓のはたらきが低下するリスクもあるため、自己判断ではなく医師に相談しながら取り組むべきです。

 

CKDは、腎臓の機能低下をできるだけ遅らせることが必要だということでしたが、そういった治療薬は現在あるのですか

治療薬の面ではここ最近、大きな進歩がありました。「SGLT2(エスジーエルティーツー)阻害薬」といって、血液中のブドウ糖を尿へ排泄することにより糖尿病の方の血糖値を改善するための薬なのですが、この薬が腎臓機能の低下速度をおさえたり、尿たんぱくを減らす効果や心血管病を防ぐ効果が認められたのです。また、昔から心臓病向けとして使用されてきた血圧の薬「MR(エムアール)拮抗薬」も、最新のくすりはCKDや心血管病を防ぐ効果が示されています。

 

また大分大学では、2020年ごろ「糖尿病性腎症重症化予防専門外来」を、大分県や大分県医師会との共同事業として設置しました。患者さんには通常は地域のかかりつけ医で治療を続けていただき、数ヶ月に一度、この外来であらゆる面から総合診断と指導をおこなうことで、重症化抑制のサポートをしていこうと始まった取り組みです。現在、専門医・看護師・管理栄養士など多職種が連携して、診断や治療・食事などの指導をおこなっています。

 

治療薬は、これからもっと多くの効果的なものが出てくると期待できるのではないかと感じていますが、どんなにいい薬ができても、血圧や血糖の数値をコントロールする生活習慣である適正な体重、バランスのよい食事(減塩や飽和脂肪酸の制限など)、運動、節酒、禁煙などを心がけることは、予防と治療の土台だということを忘れないでくださいね。

 

CKDの予防や治療薬の最新の状況について詳しくお話いただき、ありがとうございました。最後に、読者のみなさまにメッセージをお願いします。

ここ3年間、コロナの影響で大分県は全体的に検診数が半数近くまで落ち込んでいます。CKDはもちろん、糖尿病など生活習慣病になっていないか、悪化していないかなど、とにかく検診でしっかり自分の体の状態について把握してほしいと思います。

 

じつは大分県は、透析患者さんの割合が非常に高い地域で、100万人あたりの透析患者さんの割合が全国でワースト5です。大分県から透析患者数を少しでも減らすためにも、3月4日のイベントにご参加いただき、一人ひとりが腎臓病についての理解を深め、予防への意識を高めていただければ幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

<< 前のページへ戻る